破断特性 /FAIL/ORTHBIQUAD を用いた 1要素モデルと説明
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概要
/FAIL/ORTHBIQUAD は異方性材料用の、応力三軸度を考慮した塑性ひずみ基準の破断則です。この記事では、リファレンスに付属している設定例 Example 2 を用いて説明をし、1要素モデルを提供します。
https://2022.help.altair.com/2022/hwsolvers/rad/topics/solvers/rad/fail_orthbiquad_starter_r.htm
全部を説明するのはリファレンスガイドに任せて、本書では Example 2 に限った説明とします。
/FAIL/ORTHBIQUAD Example 2 の説明
#---1----|----2----|----3----|----4----|----5----|----6----|----7----|----8----|----9----|---10----| /FAIL/ORTHBIQUAD/2/1 # PTHK MFLAG SFLAG NANGLE FCT_IDEL EI_REF 1 0 1 2 101 .3 # C5 DEPS0 C_JCOOK FCT_ID_RATE RATE_SCALE .56 0 0 0 0 # C1 C2 C3 C4 INST 3.01 .98 .7 .42 .3 1.505 .49 .35 .21 .15 #---1----|----2----|----3----|----4----|----5----|----6----|----7----|----8----|----9----|---10----|
PTHK は、シェル要素のための機能で、板厚方向の積分点がどれくらいの割合で破断条件を満たしたら要素を削除するのかです。デフォルトが 1.0 でここでも 1 が入っているので、全ての積分点が破断条件を満たしたら、要素が消えます。基本ブランクにしておいて、必要な時だけ調整すればよいと思います。
SFLAG =1 は、後で説明する C1 ~ C3、C3 ~ C5 で 2個の二次方程式をつなぐ形です。もっとも単純な形式です。
NANGLE=2 は材料試験を 2パターンの角度で行ったので、それぞれを値を使いますよ、という宣言になります。試験の向きは Radioss が指定したものになります。今回は試験片を 0度と 90度に向けて試験したものとなります。
FCT_IDEL は、メッシュサイズで基準値をスケーリングするための関数 /FUNCT です。あとで出てきます。破断条件はメッシュサイズに依存しますよ、という話は、こちらの記事も参考にしてみてください。
https://blog.altairjp.co.jp/yomoyama27/
EI_REF は、上記のメッシュサイズ依存性を考えるときの基準となる要素サイズです。先に出てきた FCT_IDEL で指定した /FUNCT の X 成分を参照するときに、要素サイズ/EI_REF を参照します。つまり要素サイズが 10mm で EI_REF=0.35 のとき X 成分が 10/0.35=28.5 を参照します。デフォルトは 1.0 です。正直、何も入れない方が FCT_IDEL 向けのカーブを作るときに混乱しないと思います。ちなみに例題ファイルのコメント欄では E の次が I (アイ) となっていますが、本来 Element の El (小文字のエル) を見間違えたものです。
C5 は 2軸均等引張試験での破断塑性ひずみです。これは試験片の向きに依存しません。
C1 ~ C4 は 2行あり、最初の行が試験片を 0度に向けて行ったものであり、2行目が 90度の物です。C1 単軸圧縮下での破断塑性ひずみ、C2 せん断、C3 単軸引張り、C4 平面ひずみ引張り です。
INST はネッキングが発生する塑性ひずみですが、今回の破断モデルの作り方 (S-FLAG=1) では使用されないため、入力する必要はありません。
FCT_IDEL で示された /FUNCT はこうなっています。
/FUNCT/101 Regularization DP450_ODG3_MED-5 0 1 1 1 6 .35 10 .35
メッシュサイズ/EI_REF = X 成分 のため、1*0.35mm=0.35mm までは、入力した C1 ~ C5 の等倍、6*0.35=2.1mm 以上では C1 ~ C5 の 0.35 倍となります。
1 要素、単軸引張りモデル
今回は要素長 10mm の単軸引張りを行いました。試験片は 0度配置です。単軸引張りなので 0度の C3 に該当します。C3=0.7 でメッシュサイズ補正 0.35 倍となるので塑性ひずみ 0.245 で破断となります。
アニメーションで想定通りの塑性ひずみで破断していることが分かりました。(アニメーション出力間隔の関係で破断する少し手前までしかデータがないので 0.245 にきっちり届くアニメーションにはなりません。)
データのダウンロード: .inc としてインクルードしている部分は HyperWorks 2022 が未対応の部分です。読み込んで作業すると壊れるので気をつけてください。
余談
例題に使っている材料は /MAT/LAW93 という異方性の弾塑性材料で、別名 /MAT/CONVERSE です。あの APA でも使用可能な、射出成型解析結果から、繊維配向などを考慮した上で、いろいろなソルバー向けのモデルを作る、あの CONVERSE です。CONVERSE が RADIOSS モデルを作る際に利用する材料が /MAT/LAW93 で、別名 CONVERSE が付いています。
アルテアジャパン公式製品リンク
https://www.altairjp.co.jp/radioss/
https://www.altairjp.co.jp/converse/